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リファレンス

和包丁・和食器・研ぎ 用語集

和包丁を巡ってシェフやコレクターが出会う言葉を、一冊に。刃の種類と鋼材、各部と刃付け、鍛造と仕上げ、産地と名工、砥石と研ぎ、そして和食器・漆器・海外コレクター文化までを網羅した総合リファレンスです。

この用語集は、包丁の種類と鋼材の冶金学から、鍛造・砥石・研ぎ、さらに和食器・漆器・海外コレクターコミュニティまで、11のセクションで構成しています。

1包丁の分類・形状・用途

和包丁および洋包丁・特殊包丁の主要な形状と、それぞれが担う役割です。

刺身・調理

柳刃包丁(Yanagiba)
刺身をひと引きで切るための、細長い片刃包丁。
蛸引包丁(Takohiki)
先端が四角い、関東型の刺身包丁。
先丸蛸引(Sakimaru Takohiki)
先端が日本刀のように反り上がった、華やかな形状の蛸引。
切付柳刃(Kiritsuke Yanagiba)
切付(剣型)の形状を持つ、片刃の刺身包丁。
フグ引包丁(Fuguhiki)
薄造りのフグの身を極薄に切るための、超薄身の包丁。

魚捌き

出刃包丁(Deba)
魚を解体・捌くための、重厚な片刃包丁。
身卸出刃(Mioroshi Deba)
出刃と柳刃の中間。1丁で捌きから刺身まで対応します。
相出刃(Ai Deba)
通常の出刃よりもやや細身で、軽量な出刃。
洋出刃(Yo-Deba)
両刃で作られた、厚手の洋型出刃。
鮭切り包丁(Sakekiri)
大型サーモンや鮭を豪快に叩き切る、大型包丁。
マグロ切り包丁(Maguro-kiri)
長大なマグロを一刀両断するための、刀並みの包丁。

野菜・万能

薄刃包丁(Usuba)
千切りやかつらむきに使う、直線的な片刃の野菜包丁。
鎌型薄刃(Kamagata Usuba)
刃先が丸みを帯びた、関西型の薄刃包丁。
菜切包丁(Nakiri)
両刃の野菜包丁。家庭でも扱いやすいのが特長です。
むきもの包丁(Mukimono)
野菜の繊細な飾り切り・彫刻に使われる、小型の片刃包丁。
三徳包丁(Santoku)
肉・魚・野菜に対応する、万能な家庭用の両刃包丁。
舟行包丁(Funayuki)
漁師が船上で、魚の捌きから万能調理までこなした包丁。

西洋・万能

牛刀(Gyuto)
西洋のシェフナイフが日本で進化したもの。肉や大型食材に向きます。
剣型牛刀(Kiritsuke Gyuto)
先端が斜めに尖った、切付形状を持つ両刃の牛刀。
ペティナイフ(Petty)
細かい仕込みや果物用の、小型の万能包丁。
筋引(Sujihiki)
大きな肉ブロックから筋を切り外し、スライスするための包丁。
皮むき包丁(Paring)
果物などの皮むき用の、超小型の包丁。
切付包丁(Kiritsuke)
先端が斜めに切り落とされた、板長のための最高位の包丁。
レーザー(Laser)
身が極限まで薄く、抵抗なく食材に吸い込まれる包丁。
ワークホース(Workhorse)
重厚で頑丈な、ハードユース向けのグラインド。

専門調理

骨切り刀(Hamokiri / Honekiri)
鱧(ハモ)の骨切り専用の包丁。皮を切らずに細骨を刻みます。
うなぎ裂き(Unagisaki)
うなぎを裂く包丁。江戸裂・大阪裂・京裂・名古屋裂と、地域で形が変わります。
そば切り包丁(Sobakiri)
蕎麦生地を均一に切るための、大型の包丁。
麺切り包丁(Menkiri)
うどんやラーメンの麺を、等間隔で切る直線刃の包丁。
パン切り包丁(Pankiri)
波刃を持ち、パンを綺麗に切る包丁。
中華包丁(Chukabocho)
長方形の広い身を持つ、万能・解体用の包丁。
骨スキ(Honesuki)
肉の解体用の、強靭で小型の三角形の包丁。
ガラスキ(Garasuki)
一頭買いした肉の解体などに使う、大型の骨スキ。
カイザキ(Kaizaki)
貝類をこじ開けて捌く、専用の小型包丁。
冷凍切り包丁(Reito-kiri)
鋸刃で、カチカチの冷凍食材を切り落とす包丁。

2鋼材と冶金学

包丁の切れ味・長切れ・耐食性を決定づける、金属材料と熱処理の用語です。

炭素鋼・ハガネ(日立/Proterial)

白紙1号(Shirogami #1)
炭素量が高く、最高峰の切れ味を誇る純炭素鋼。
白紙2号(Shirogami #2)
研ぎやすさと切れ味のバランスが良い、定番の炭素鋼。
白紙3号(Shirogami #3)
不純物が少なく、扱いやすい炭素鋼。
青紙1号(Aogami #1)
クロム・タングステンを加え、耐摩耗性を高めた高級鋼。
青紙2号(Aogami #2)
プロの包丁に最も多く使われる、長切れするハガネ。
青紙スーパー(Aogami Super)
炭素・モリブデン・バナジウムを配合した、超長切れ鋼材。
黄紙(Kigami)
大衆品や農工具に使われる、一般的な炭素鋼。
SK鋼・日本鋼(SK Steel)
リーズナブルな和包丁向けの、標準的な工具鋼。

ステンレス・粉末鋼

VG10(V金10号)
硬度・耐食性・長切れのバランスが良い、代表的なステンレス。
VG1/VG2/VG5
武生特殊鋼材が手掛ける、研ぎやすいステンレス。
銀三(銀紙3号)
ハガネと同等の鋭い刃が付く、最高級の不錆鋼。
AUS-8/AUS-10
愛知製鋼が製造する、耐食性に優れたステンレス。
スウェーデン鋼(Sandvik)
純度が高く、非常に鋭い刃が付く北欧鋼。
440C
高炭素で、耐食性と硬度のバランスが良いステンレス。
SG2/R2
驚異的な長切れを誇る、高級な粉末ハイス鋼。
ZDP189
炭素量3%超という、超高硬度を誇る粉末鋼。
HAP40
過酷なプロ現場に対応する、超耐摩耗性の粉末ハイス鋼。
SRS15
研ぎやすさと長切れを両立した、粉末ハイス鋼。
SLD/D2(セミステンレス)
金型鋼ベースの、耐摩耗性に優れたセミステンレス。

冶金学・金属物理

HRC硬度(ロックウェルCスケール)
刃物の硬度指標。和包丁は一般に HRC 58〜67。
マルテンサイト(Martensite)
焼入れによって形成される、硬い金属組織。
オーステナイト(Austenite)
焼入れ前、高温状態における金属組織。
残留オーステナイト(Retained Austenite)
焼入れ後も変形せず残る、柔らかい組織。
サブゼロ処理(Sub-zero)
液体窒素等で急速冷却し、組織をマルテンサイト化させて硬化・安定させる技術。
一次・二次炭化物(Carbides)
鋼内部に分散し、長切れを生む微細な硬質粒子。
脱炭(Decarburization)
鍛造時に鋼の表面から炭素が抜け、柔らかくなる現象。
靭性(Toughness)
金属の粘り強さ・折れにくさ。
炭素当量(Carbon Equivalent)
鋼材の焼き入れ性を示す数値。
クラッド鋼(Clad Steel)
あらかじめ異種金属を接合してある、複合圧延材。

熱処理工程

焼入れ(Yaki-ire)
高温加熱から急速冷却し、硬度を出す工程。
焼戻し(Yaki-modoshi)
焼入れ後の脆さを取り除き、靭性を与える工程。
焼なまし(Yaki-namashi)
内部ストレスを取り除き、金属を軟化させる工程。
焼ならし(Yaki-narashi)
結晶組織を微細化・均一化させる工程。

酸化とサビ

パティナ(Patina)
炭素鋼が食材の酸と反応して生じる、保護的な酸化膜。
黒サビ加工(Forced Patina)
酢や紅茶等で人工的に黒酸化皮膜を作り、赤サビを防ぐ手法。
赤サビ(Red Rust)
金属を浸食して破壊する、有害なサビ。

3包丁の構造・部位・グラインド

包丁各部の名称および、刃付け(グラインド)の構造用語です。

和包丁の各部名称・構造(全項目網羅図解) ■ 表面構造(Side View) Spine 峰・棟(みね・むね) Signature 銘(めい) Tip 切っ先(きっさき) Shinogi しのぎ筋 Hira (Flat) 平(ひら) Machi マチ Ferrule 口金(金属) 角巻(水牛) Handle end 柄尻(えじり) Handle 柄(え) Tang 中子(なかご) Kireha 切刃 Chin あご Heel 刃もと Hazakai 刃境(はさかい) Edge 刃先(はさき) ■ 裏面構造(Back side) Uraoshi 裏押 Jiai 地あい Urasuki 裏すき Jizakai 地境 ■ 断面図(Cross section) 表 (Front side) 平 (Hira / Flat) 切刃 (Kireha) 裏 (Back side) High-carbon steel 鋼(はがね) Soft iron 軟鉄(なんてつ) Urasuki 裏すき もしくは樋(ひ)
片刃和包丁の各部(表面・裏面・断面)。しのぎ線が平と切り刃を分け、裏面は凹状に研がれています(裏すき)。霞包丁は硬い鋼を軟鉄に合わせた構造です。

部位名称

平(Hira)
しのぎ線からミネ(背)までの、平坦な側面。
切り刃(Kiriha)
しのぎ線から刃先までの、傾斜面。
しのぎ線(Shinogi Line)
平と切り刃の境界線。
アゴ(Ago / Choil)
刃の根本にある、角ばった部分。
マチ(Machi)
首元とブレードの間にある、隙間部分。
ミネ・棟(Mine / Spine)
包丁の背の部分。
切っ先(Kissaki / Tip)
刃の最先端部分。
反り上がり(Sori)
切っ先に向かって描く、曲線の角度。
刃幅(Habahi)
アゴからミネまでの、垂直幅。
刃渡り(Hanawatari)
マチまたはアゴから、切っ先までの長さ。
スパイン・テーパー(Distal Taper)
ミネ(背)の厚みが、根元から刃先へ段階的に薄くなる構造。
中子・茎(Nakago / Tang)
柄の内部に挿入される、金属の根元部分。
フルタング(Full Tang)
金属が柄の末端まで通っている、洋包丁の構造。
ハーフタング・挿し柄(Half Tang)
中子が柄の内部に押し込まれる、和包丁の構造。
水牛角・桂(Suigyu / Katsura)
和柄の口輪に使われるパーツ。
尻金(End Cap)
柄の末端に取り付ける、金属パーツ。
柄の断面形状(Handle Profile)
八角柄・栗型(D字)・丸型などの断面形状。

面構造・グラインド

裏スキ(Urasuki)
片刃和包丁の裏面にある凹み。食材の張り付きを防ぎ、研ぎを容易にします。
裏押し(Uraoshi)
裏スキの周囲にできる、細い平坦な研ぎ面。
糸刃・小刃(Itoba / Koba)
刃先に極小の角度(二段刃)をつけ、刃こぼれを防ぐ技法。
蛤刃(Hamaguri-ba)
断面が蛤の貝殻のように、微小に膨らむ刃付け。
凹面グラインド(Concave Grind)
断面が凹状に研ぎ減らされた、グラインド。
ベタ研ぎ(Beta-togi)
切り刃全体を砥石にぴったり当てて研ぐ手法。
S-グラインド(S-Grind)
ブレード中央を凹ませ、食材離れを高めたカスタムグラインド。
非対称グラインド(Asymmetric Grind)
右利き用などに、左右で傾斜角度を変えた研ぎ(例 7:3、8:2)。
ソリッドベベル(Primary Bevel)
包丁のベースとなる、主要な傾斜面。

仕上げ・性能表現

マチ磨き・アゴ磨き(Spine & Choil Smoothing)
マチやアゴ、ミネの角を丸く磨き上げ、指の痛みを防ぐ加工。
ウェッジング(Wedging)
包丁の厚みにより、根菜などの硬い食材を割ってしまう抵抗。
フードリリース(Food Release)
切った食材が包丁の側面に付着せず、離れる性能。
チョイル・ショット(Choil Shot)
アゴ側から覗き込んだ、断面写真。
サヤ・サヤピン(Saya & Saya Pin)
木製の保護ケースと、固定用のピン。

4鍛造・製造技法

伝統的な鍛冶・研ぎ職人による、包丁の製造工程の用語です。

本焼(Honyaki)
単一のハガネで作る、最高峰の包丁。歪みが出やすく、製造難易度が極めて高い仕立てです。
  • 水本焼(Mizuhonyaki):水で急冷する、最高難度の本焼技法。
  • 油焼き(Aburahonyaki):油で冷却し、成功率を高めた本焼技法。
霞(Kasumi)
ハガネ(刃鋼)と軟鉄(地鉄)を鍛接して作る、和包丁の標準構造。
  • 本霞(Honkasumi):最高級の材料と精密な研ぎ工程で仕立てられた、上位ライン。
鍛接(Tansetsu)
高温加熱した異種金属を、ハンマーで叩き圧着する技法。
割り込み・三枚打ち(Warikomi / San-mai)
軟鉄の間にハガネを挟み込む、構造。
甲伏せ(Kofuse)
芯材を別の金属で包み込む、鍛造技法。
ダマスカス・墨流し(Damascus / Suminagashi)
異種金属を積層させて叩き出す、木目模様。
黒打ち(Kurouchi)
鍛造時の黒い酸化皮膜を、そのまま表面に残す素朴な仕上げ。
槌目(Tsuchime)
金槌で叩いた凹凸模様を残す、デザイン仕上げ。
波紋・土置き(Hamon / Tsuchi-oki)
粘土を塗って冷却速度に差をつけ、本焼に出る硬度境界線。

表面仕上げ

鏡面仕上げ(Kyomen)
刃身を鏡のように磨き上げる、加工。
梨地(Nashiji)
和紙のように、うっすらとザラつきを残したマット仕上げ。
ヘアライン(Hairline)
一方向の極細ラインを入れる、仕上げ。
ショットブラスト(Shot Blast)
微粒子を吹き付け、マットな質感を作る加工。

製造工程

火造り(Hizukuri)
赤熱させた金属をハンマーで叩き、包丁の形を作る工程。
歪み取り(Hizumi-tori)
焼入れ時や冷却時に生じる、ブレードの曲がりを直す工程。
手打ち鍛造(Tezukuri Tanzo)
職人が大槌で、手作業で鍛え上げる技法。
水引き(Mizu-hiki)
焼入れ時に水へ沈める、角度とタイミングの技。
酸洗い(Acid Etching)
酸を使って、ダマスカス模様や波紋を浮かび上がらせる加工。
本刃付け(Honbazuke)
出荷時または購入後に、手作業で実用的な鋭い刃を付けること。
タガネ・銘切り(Tagane / Meikiri)
特殊な鑿を使い、手作業で名前を刻む工程。
柄のすげ込み(Sugekomi)
加熱した中子を木柄に打ち込み、固定する作業。

5主要産地・名工・ブランド

日本国内の主要な刃物産地と、伝統を受け継ぐ著名な工房・職人です。

五大刃物産地

堺打刃物(Sakai)
プロ用和包丁の国内圧倒的シェア。鍛冶と研ぎの分業制。
関刃物(Seki)
刀鍛冶の伝統を継ぐ産地。洋包丁・ステンレス製品に強み。
越前打刃物(Echizen)
タケフナイフビレッジを拠点とする、薄打ち・モダンデザイン。
三条刃物(Sanjo)
重厚な鍛造技術と、頑丈な構造(ワークホース)を得意とする産地。
土佐打刃物(Tosa)
自由鍛造による黒打ち包丁や、アウトドアナイフの名産地。

堺エリア

堺孝行(青木刃物)
伝統工芸士の技からモダンラインまで、世界展開するブランド。
池田美和
水本焼鍛造の第一人者(銘 妙法)。
白木俊治
堺の鍛造の発展を支えた、伝説的な鍛冶師(旧・白木刃物)。
中川打刃物
白木刃物の流れを汲み、銀三鋼や青紙鍛造を継承する名門。
山塚尚剛
本焼包丁の鍛造を得意とする、堺の名工。
野村祥太郎
数多くの名作を研ぎ上げてきた、伝統工芸士・研ぎ師。
高田ノハムノ
高田一之氏が手掛ける、研ぎの工房。

三条エリア

岩崎重義
三条の伝統刃物・和剃刀研究の巨匠(重房の師)。
重房
飯塚解房氏と息子たちによる、最高峰ブランド。
吉兼刃物
熱処理技術に定評があり、SKDやSLD材を追求する老舗。
真崎直樹
伝統的な火造りと、独自の重量感あるグラインドで知られる鍛冶師。
日野浦司・睦
味方屋を率いる鍛造親子。美しい雲流鍛造で有名。

越前エリア

佐治武士
伝統工芸士でありながら、カスタムナイフ風デザインのパイオニア。
黒崎優
雫や風神などの独創的な槌目デザインで、世界的人気。
加藤義実
タケフナイフビレッジを支える、名工。

その他の名工・メーカー

柴田崇行(Kotetsu)
極薄刃 Kotetsu の研ぎ師。
正本総本店
プロシェフから絶大な信頼を得る、東京の超老舗。
有次
京都・錦市場と東京・築地に店を構える、歴史的な刃物店。
藤次郎
三条に拠点を置き、VG10クラッド包丁などの量産を誇るメーカー。
ミソノ(Misono)
関の洋包丁メーカー。UX10シリーズが世界中で有名。
グレステン(Glestain)
ブレード表面の凹み(ディンプル)加工が特徴の、洋包丁。

6研ぎ技術・砥石

包丁の切れ味を維持・向上させるための、砥石および研ぎの用語です。

人造砥石・ツール

シャプトン(刃の黒幕)
硬度が高く目減りしにくい、定番の人造砥石。
ナニワ(Chosera/チョセラ)
滑らかな研ぎ味と均一な仕上がりを誇る、高級ライン。
キング(King)
初心者の練習用からプロまで、幅広く愛される定番ブランド。
スエヒロ(Cerax)
適度な泥(スラリー)が出て、刃当たりがソフトな砥石。
森平(Morihei)
霞仕上げや天然砥石に近い研ぎ味を追求した、老舗問屋ブランド。
北山・嵐山(Kitayama / Arashiyama)
綺麗な鏡面仕上げや最終刃付けに適した、超仕上げ砥石。
アトマ(Atoma)
砥石の面直しに使用される、高耐久のダイヤモンドプレート。

京都天然砥石 — 鉱山

中山(Nakayama)
東の正横綱と称される、最高級仕上げ天然砥石の有名鉱山。
大平(Oohira)
良質な巣板を多く産出する、鉱山。
八木ノ嶋(Yaginoshima)
質の高い巣板や合砥を産出する、鉱山。
菖蒲谷(Shoubudani)
多様な層の良質な砥石を産出する、歴史的鉱山。
丸尾山(Maruoyama)
近年も採掘が続けられている、丹波の有名鉱山。

質・模様分類

巣板(Suita)
気泡痕(巣)がある層。研削力が高く、本焼・霞包丁の研ぎに好まれます。
内曇(Uchigumori)
地鉄を白く霞ませ、刃鋼を光らせる、最高峰の仕上げ石。
黄板・浅黄(Kiita / Asagi)
砥石の色相分類(黄色の最高級石/浅青色の超硬質石)。
戸前(Tomae)
仕上げ天然砥石の中で、最もポピュラーな層。
ナマズ(Namazu)
茶色の斑点や帯状の模様(景色)が入った、天然砥石。
JNAT硬度スケール
海外で用いられる、天然砥石の硬さの1〜5段階指標。

研ぎの技術・工程

面直し(Flattening)
凹んだ砥石の表面を、ダイヤモンドプレート等で平らに修正する作業。
ドレッシング(Dressing)
砥石の表面の目詰まりを取り除く作業。
研ぎ汁・スラリー(Slurry)
砥石から出た水と、砕けた砥粒の混ざり物。
名倉(Nagura)
砥石表面を擦って、研ぎ汁(泥)を強制的に発生させるための小さな石。
バリ・返り(Burr / Kaeri)
研いだ際に、刃先の反対側に生じる微細な金属のめくれ。
小刃付け・二段刃(Kobazuke)
刃先に角度をつけて強度を与え、欠けを防ぐ技法。
ベタ研ぎ(Beta-togi)
切り刃全体をぴったり砥石に当てて、研ぎ込むこと。
あて研ぎ(Ate-togi)
特定の凹凸や歪み部分だけを狙って当てる、部分修正。
裏押し(Uraoshi)
和包丁の裏スキ周囲を、均一に1mm前後の帯状に研ぐ技術。
革砥(Strop)
革にペースト等を塗り、仕上げにバリを取り除くツール。
養生(Yojo)
天然砥石の側面・底面に漆等を塗り、水による崩れを防ぐ処理。
研ぎ感・刃当たり(Feedback)
研ぐ際に手へ伝わる、滑らかさや抵抗感。

7和食器の分類・やきもの産地

日本の伝統陶磁器(土物・石物)の、主要産地と分類です。

磁器

有田焼・伊万里焼(佐賀)
日本初の磁器。澄んだ白磁に、華やかな赤絵・染付が映えます。
波佐見焼(長崎)
モダンでデザイン性に優れた、日常使いの磁器。
九谷焼(石川)
九谷五彩(緑・黄・紫・紺青・赤)を用いた、濃厚な絵付け。
砥部焼(愛媛)
厚手で頑丈な白磁に、濃い呉須(青)の絵付けが特徴。

陶器

美濃焼(岐阜)
生産シェアトップ。志野・織部・黄瀬戸など多彩です。
瀬戸焼(愛知)
瀬戸物の語源。日本六古窯の一つで、多様な釉薬技術を持ちます。
益子焼(栃木)
濱田庄司ゆかりの地。ぽってりとした温かみのある民藝陶器。
笠間焼(茨城)
作家の自由な造形が際立つ、陶器。
萩焼(山口)
使うほどに貫入へ茶渋が浸透する、萩の七化けで有名。
唐津焼(佐賀)
一楽二萩三唐津と称される、渋く味わい深い茶陶。
薩摩焼(鹿児島)
豪華絢爛な白薩摩と、庶民的で頑丈な黒薩摩が存在します。
小鹿田焼(大分)
飛び鉋や刷毛目の技法を継承する、民藝陶器。
やちむん(沖縄)
沖縄の土と灰を用いた、力強くおおらかな陶器。

焼き締め

備前焼(岡山)
釉薬を一切使わず、窯変や胡麻、緋色などの変化を楽しみます。
信楽焼(滋賀)
粗い土感と、自然釉(焦げ)の風合いが魅力。
丹波立杭焼(兵庫)
六古窯の一つ。落ち着いた色合いです。
越前焼(福井)
実用的な水瓶などから発達した、素朴な焼き締め。
常滑焼(愛知)
朱泥急須が、全国的に有名です。
伊賀焼(三重)
耐熱性に優れ、荒々しい土感とガラス質の自然釉が特徴。
萬古焼(三重)
耐熱性に極めて優れ、国内の土鍋生産の多くを占めます。

釉薬・装飾技法

志野(Shino)
長石釉を厚く掛け、表面に小孔(巣穴)を残す、白い陶器。
織部(Oribe)
銅顔料による鮮やかな緑釉と、自由な幾何学模様。
黄瀬戸(Kiseto)
あやめ手などに代表される、落ち着いた黄色の淡い釉薬。
粉引(Kohiki)
褐色素地に白い化粧土を掛け、柔らかい白に見せる手法。
刷毛目(Hakeme)
化粧土をハケで塗った動き(痕跡)を、デザインとして残す技法。
三島・印花(Mishima / Inka)
印花(スタンプ)で模様を刻み、凹部に白土を埋め込む象嵌技法。
青磁(Seiji)
微量の鉄分を含んだ釉薬が、還元焼成で青緑色に発色した磁器。
呉須・染付(Gosu / Sometsuke)
酸化コバルト顔料で素地に下絵付け(青色)をする技法。
オーグスヤー(Ogusuya)
沖縄のやちむん等で使われる、緑色の釉薬。

8和食器のフォルム・鑑賞美学

器の形状と、日本の伝統的な鑑賞の視点・美学です。

形状と用途

平皿・角皿(Hirazara / Kakuzara)
盛り付け用の、基本となるお皿(丸皿・角皿)。
小鉢(Kobachi)
和え物や煮物を盛る、小ぶりで深い鉢。
片口(Katakuchi)
注ぎ口が片側についている器。酒器やタレ入れに用います。
高台皿(Kodai-zara)
足(高台)が高くついた、格調高いお皿。
変形皿(Henkei-zara)
扇形や葉の形など、自然を模した非対称なお皿。
豆皿(Mamezara)
手のひらサイズの極小皿。醤油皿や香の物用。
盃(Sakazuki)
浅く平たい、酒の盃。
ぐい呑み(Guinomi)
ぐいと飲むための、小ぶりで深めの酒器。
徳利(Tokkuri)
酒を注ぐための、首の細い酒器。
そば猪口(Soba Choko)
蕎麦つゆ入れのほか、フリーカップとして多用途に使える器。

鑑賞用語と美学

貫入(Kannyu)
焼成後の冷却時に生じる、表面の微細なヒビ模様。
窯変(Yohen)
窯の中の炎や灰、温度変化によって偶然生じる、色・模様の変化。
景色(Keshiki)
器表面の凹凸、火色、灰の掛かり具合などを、自然の風景に見立てる鑑賞法。
金継ぎ(Kintsugi)
割れたり欠けたりした器を、漆と金粉で美しく修復する伝統技法。
見込み(Mikomi)
器の内側の、底部分。
高台(Kodai)
器を支える底部の足。畳付はテーブルに接する面。
火色・緋色(Hiiro)
土の中の鉄分が炎に反応し、赤〜橙色に発色した部分。
胡麻(Goma)
窯の中で舞った木灰が器に付着し、溶けて胡麻を振ったようになった状態。
桟切り(Sangiri)
炭に埋もれることで還元焼成され、灰色や銀色に変色した部分。
侘び寂び(Wabi-Sabi)
不完全さ、素朴さ、経年変化の中に美を見出す、日本独自の審美眼。
飛び鉋(Tobiganna)
ろくろを回しながら、しなる刃物を当てて点線状の連続模様を刻む技法。

9漆器・硝子・専門調理道具

料理を引き立てる、調理器具と工芸品です。

漆器の産地

輪島塗(石川)
地の粉を用いた、堅牢優美な高級漆器。
会津塗(福島)
塗りが丈夫で実用的な、伝統漆器。
山中塗(石川)
木地挽きの技術が高く、美しい木目を生かした漆器。
津軽塗(青森)
塗り重ねと研ぎ出しを繰り返す唐塗が有名。

漆の装飾・加工

蒔絵(Makie)
漆で描いた文様に、金粉・銀粉を蒔き定着させる技法。
沈金(Chinkin)
ノミで表面を削り、その溝に漆を塗って金箔を埋め込む技法。
拭き漆(Fuki-urushi)
木地に漆を塗り込んでは拭き取り、木目を透かせる手法。

伝統硝子

江戸切子(東京)
シャープなカットと透明感が魅力の、ガラス工芸。
薩摩切子(鹿児島)
厚い色ガラス層をカットすることで生じる、グラデーション(ぼかし)が特徴。

和食の専門調理道具

鮫皮おろし(Samekawa Oroshi)
わさびを細かくすり下ろす、本鮫皮の板。
銅製おろし金(Do-oroshigane)
手作業で目立てされた、鋭いおろし道具。
骨抜き(Honenuki)
魚の小骨を引き抜く、精密なツール。
盛り付け箸・真魚箸(Moribashi / Manabashi)
先端が金属で作られた、繊細な盛り付け用の箸。
曲げわっぱ(Magewappa)
杉などの薄板を曲げて作る、木製の容器。
行平鍋(Yukihira Nabe)
表面を槌目で叩いて作る、和食の定番鍋。
鉄瓶・南部鉄器(Tetsubin / Nambu Tekki)
白湯の味がまろやかになる、伝統的な鉄器。

10コミュニティ・スラング

海外の和包丁・工芸コレクターの間で使われる、用語やカルチャーです。

買い物・聖地

かっぱ橋道具街(Kappabashi)
東京・浅草近くの、調理道具問屋街。
千日前道具屋筋(Doguyasuji)
大阪・難波の、調理道具街。

コミュニティ用語・スラング

J-Knife/JNAT
Japanese Knife(和包丁)/Japanese Natural Whetstone(日本天然砥石)の略称。
NKD(New Knife Day)
新しい包丁を購入した際に、SNSへ投稿するお祝いのタグ。
チョイル・ショット(Choil Shot)
アゴ側から覗き込んだ、ブレードの断面写真。
No Choil, No Care
Choil Shot(断面写真)がない投稿は判断できない、というミーム。
Grail Knife/Grail Stone
コレクターにとって、聖杯のように喉から手が出るほど欲しい逸品。
Patina Progression
炭素鋼包丁が使用とともに色変化していく様子を共有する、カルチャー。
Pass-around
貴重な包丁を、コミュニティ内で順番に郵送し合って試用・レビューし合うカルチャー。
KKF(Kitchen Knife Forums)
英語圏最大級の、包丁マニア・職人のオンライン掲示板。
BST(Buy, Sell, Trade)
フォーラム内の、個人間売買・交換のスレッド。

11メンテナンス・取り扱い

包丁や道具を長持ちさせるための、メンテナンス用語です。

椿油(Tsubaki Oil)
炭素鋼包丁の保管時に、サビを防ぐために塗るオイル。
錆び止め紙(VCI Paper)
気化性防錆剤が含まれた、保管用の特殊紙。
錆び取りゴム(Rust Eraser)
表面の軽微な赤サビを、擦り落とす研磨ツール。
シンクブリッジ(Sink Bridge)
シンクの上に渡して、砥石を安定固定するホルダー。
イチョウ・ヒノキまな板(Ginkgo / Hinoki)
刃先(アペックス)を傷めにくい、木製のまな板。
刃こぼれ(Chipping)
硬いものを切った際に、刃先が欠ける現象。
オーバーシャープニング(Over-sharpening)
研ぎすぎて刃先が薄くなり、強度が落ちる状態。
職人気質(Shokunin Kishitsu)
妥協なく技を磨き上げる、日本の伝統的な精神。

言葉を、その手で

これらの言葉を一番よく理解する方法は、包丁を握ることです。秋葉原店・なんば店で試し切りし、何でもお尋ねください。一引きが、用語集以上に多くを教えてくれます。

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